映画界のみならず、アートや音楽の世界でも、同じ時期、同様の現象を起こしている。ポップアートだ。1923年生まれのロイーリギデンスダイン、1925年生まれのロバートーラウシェンバーグ、1930年生まれのジャスパー・ショー・ンズなどは、前述のスターたちと同年代に属し、いずれも今までにない新しい芸術を生み出した。彼らは、アメリカのどこにでも転がっている既製品、大衆的な日用品をモチーフの対象にする。その姿勢はカジュアルそのもので、描かれる絵もきわめてカジュアルで、アメリカ的である。音楽の世界では、1940年代に起こったジャズ革命「ビーバップ」の流れから、数多くのビッグープレイヤーを輩出した。同時代の人だけ名を挙げておこう。()内は彼らの生まれた年である。マイルスーデヴィス(1926)バドーパウェル(1924)ウィントンーケリー(1931)チャーリー・パーカー(1920)セロニアスーモンク(1920)アートーブレーキー(1919)いうまでもなく、ブルース、ジャズ、ソウルは、いずれも白人に対し、黒人が自分たちの自由を求めた音楽という歴史をもつ。カジュアルな解放音楽なのだ。忘れていた。文学の世界でも、J・D・サリンジャーが1919年、トルーマンーカポーティが1924年、ジョンーアップダイクが1932年生まれだ。とくにカポーティは、二人の若者がカジュアル(偶発的)に一家を惨殺した現実の殺人事件をノンフィクションーノベルとして扱い、「冷血」を著した。「俺たちに明日はない」が制作された1年前の、1966年のことである。つまり、アメリカの1950年代から60年代にかけた、さまざまな分野での、(おおざっぱには)1920年代から30年代に生まれた人たちの自由を求める個性的な活動があって、カジュアル化か推進されたのであって、カジュアルウェアだけが勝手に進化してきたわけではないのだ。カジュアルウェアを理解するためには、アメリカの世の中全体を見渡す必要があり、とりわけ映画は、コスチュームにその思想が託されるだけに重要な鍵を握っているのである。最後に、(話の筋とは関係ないが)この時代に生まれ、カジュアルな映画に出演していた役者たちの晩年はあまり幸せとはいえず、比較的早く若死にしている人が多い。気になったので参考まで。ジェームズ・ディーン94才。事故死。ナタリー・ウッド「理由なき反抗」のディーンの恋人役。43才。ボート転覆事故。ヴィヴィアンーリー「欲望という名の電車」。53才。ノイワ、アル中。肺結核。アンソニー・ハーキンズ60才。エイズ。エルヴイスープレスリー42才。変死(公式発表は心臓発作)。スティーブーマックィーン50才。癌。ジーンーセバーグ「勝手にしやがれ」のジャン・ポール・ペルモンドの相手役。40才。死体が発見されるが原因不明。サルーミネオ「理由なき反抗」。35才。ドラッグ中毒。刺殺。モーリスーロネ56才。癌。
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