電球を最初に発明した人物というと、誰でもエジソンを思いだすだろう。しかし、実際にはそうではない。電球開発がさかんに試みられていたヨーロッパ各国には、それぞれの国に「世界で最初に電球をつくった」と言われる人がいるほど、多くの人たちが電球の発明に関わり合っている。電気抵抗によって加熱された白金線から放射される光を見つけたのは、第3話で説明した「アーク灯放電現象」と同じ、英国のハンフリーコイヴィーであった。1801年のことである。空気中であったために、すぐに白金は酸素と反応して焼き切れてしまった。白金線を真空のガラス容器のなかに入れて寿命を長くする試みは、すぐさま多数の人たちによって行なわれた。しかし、白金の融点は低く、高温に加熱できないこと、また、当然のことながら白金ではコストがかがるため、「白金フィラメント電球」は実用にはならなかった。結局、抵抗加熱するフィラメントの材料は、白金ではなく炭素に絞られていった。炭素は真空中ならばきわめて高温に耐え(約3500℃、これ以上の高温では昇華してしまう)、しかも身近にある材料である。炭素を利用した電球に関する最初の特許は、1841年に英国のフレデリックードーモレインが得ている。しかし真空技術が不十分であったため、ガラス容器に少量の空気が入り込んでしまうので、炭素の酸化を防ぐことは困難であった。