そんな時代の流れの中で、はたして今後も私立校の存在意義というのはあるのだろうか、と疑問が生じてくるが、いわゆる「お受験」には否定的な立場をとる専門家も、けっして私立校の教育自体を否定しているわけではないのだ。専門家は「真の意味でのエリート教育をする場として私立に行かせる意義がある」と言う。「高い学力を磨き、一定レベル以上の人と知的な面で切磋琢磨して、社会に貢献するエリートを育てるという点で、私立の教育には意味があります。子どもにそれだけの能力があれば、きっと楽しく有意義な学校生活がおくれるでしょう。親の経済力が許し、かつ子どもの能力次第で、私立はとてもよい教育の場となるでしょうね」専門家も、私立校に入学した以上は「真のエリート」になるべきだと主張する。ただし、「エリート」とは一流校を卒業して、一流企業のサラリーマンになっていい暮らしをすることを必ずしも意味していない。「真のエリートたるべき条件は、その一、特定のあることに秀でた能力を持っていること。その二、社会のため貢献する人間であること。その三、リーダーシップのとれる人間であること」と専門家は定義している。厳然とした階級社会であるヨーロッパでは、「真のエリート」とされる階層の人たちには、ノブレスーオブリージ(社会的・経済的に恵まれた階層の人には、そうでない人たちを助ける義務があるという意味)が課せられる。英国王室の次男アンドリュー王子がフォークランド紛争のときに最前線で戦ったというのが、その典型的な例である。そのような非常時でなくても、身を粉にしてほかの人たちのために無償で働くことが、エリート層には求められている。ごく限られた階級と能力をそなえた人しか入学できないイートン、ハローといった英国の名門パブリック・スクールは、まさにそういう「エリート」を育てるための私立校である。
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