おしゃれであるかどうか

2011.05.06

おしゃれであるかどうかとか、互いの趣味が合うか否かなどということは、もうどうでもいいことに思えた。私を大きく変えたのは「どうしても結婚をしなければ」という強い意志の力だったのである。その前の年の冬、私は突然、結婚をしたいという激しい思いにつき動かされた。結婚して、自分の所帯を持ちたい。地に足のついた生活をしたい。そうしなければ仕事も何もかも、この先一歩も進めなくなる。それはかなりせっぱ詰まった息苦しいほどの衝動だった。いつの間にか自分の中に積もり、溜まっていった思いが、一気に爆発したかのようであった。編集者という仕事柄、当時の私はさまざまな世界の人たちと知り合い、親しくなるチャンスがあった。その交際範囲の広さを誇りに思うと同時に、どこへ行っても誰と会っても、ここは自分の居場所ではないという思いにとらわれ悩んでいた。出かける前にあれこれ服を取り出しては、今日に一番相応しい服を考えてみるのだが、結局は決まらず、疲れ果てて納得のいかない格好で出かけては後悔した。コンサバ派の女の子が、黒いベルベットの襟のついたカシミアのきれいなワンピースを着ていると、気に入って買ったはずのヨウジヤマモトのグレーのジャケットがむしょうにみすぼらしく思えた。